錦織は先染紋織物(さきぞめもんおりもの)といって織物の設計図にあたる紋意匠図を制作し、あらかじめ糸を必要な色に染め、機に経糸を張り、これに緯糸を組み合わせていくことで文様を織り出していきます。
高度に専門分業化された世界で、糸から織り上がって作品になるまでに70人以上の職人の手を経ることになります。
後述の工程は大きく分けた場合です。
図案家が絵を描く場合、古典の文様を活用する場合、画家の作品を使用する場合、時にはラフスケッチから制作することもある。
織物設計書に基づいて、製織の装置や技術、糸の性質、色彩などを考え、意匠紙(方眼紙)に図案を見ながらどの場所にどの色で織るかを升目一点ごとに塗り分け、さらにどういう組織で織るかなどの指示を書き込んでいく。
織物の設計図にあたり、最終的に形などを決定するので、最も重要な織物の工程である。
意匠紙:織物設計書に基づいて経糸・緯糸の本数に合せた罫数の方眼紙。
方眼の経・緯ひと筋ずつがそれぞれ経糸・緯糸の一本一本にあたる。
紋意匠図に基づいて、紋紙に穴を彫る作業。ジャカードはこの穴を読み取って、タテ糸の上げ下げを指令する。
繭1個から1本ずつの糸を取り出し、これを数本を合せて撚りをかけて生糸を製造する。その生糸を必要な本数だけ束ね、回転を加えて捻じる工程を撚糸(ねんし)という。
明度、彩度、濃度、色相など、指示された通りに調整しながら糸を染めていく。織物設計者は織り上がったときのタテ糸・ヨコ糸や組織等の織物構成を考えながら配色をする。化学染料、天然染料(植物)などの染料がある。精練(せいれん):糸染の前に生糸の表面についているセリシンというニカワ質の成分や汚れなどを石鹸や酵素の入った液で練り洗いし、取り除く作業。絹本来の美しい光沢のある白銀色と柔らかい風合いを引き出す。生糸そのままを使用することもある。
染色された「かせ状」の糸を色別に糸枠に巻き取る。その後、織物設計書に基づいて、織物に必要な枠数や本数を定め、経糸は整経に、緯糸は糸枠に巻いた後、緯管に巻く。
織物設計書に基づいて、経糸を織物に必要な長さと幅(糸の本数)にそろえ、製経機で糸を整える作業。最後に千切(ちきり:経糸を巻く円筒)に巻く。
紋紙やフロッピーディスクのデータから経糸の上げ下げ情報を読み取り、これを綜絖に伝達して経糸を動かす装置。
ジャカードの指令に基づいて、経糸を上下に開口させ、その間を杼が繰り出す緯糸が通れるようにする仕掛け。織機の心臓部にあたる。
箔は伝統的には和紙に金箔や銀箔を張り付け、極細に裁断し織り込む。金銀糸は芯になる糸に細かく裁断した金銀箔を巻いて糸状にしたもの。模様箔は銀箔を焼いて模様を付けたものや、ラッカーなどの着色塗料を使って箔原紙に直接模様を付けたもの。
織機には、動力を用いて織る力織機と、手足の力で操作する手織(てばた)がある。力織機は作業効率がよくコスト削減につながるが、色数が多く複雑で精緻な織物は、今日でも手機で丹念に織り上げるしかない。中でも高機は風合いが良く、芸術性に優れた織物を製作することのできる機である。織り手は織物に応じて機や経糸の張力などを調整し、紋意匠図を見ながら製織する。
経糸の間に緯糸を通すのに使われる本樫(ほんがしわ)製の道具を杼またはシャトルという。
機を織る際に、経糸の配列を整え、織幅を一定に保つことで糸がばらついたり絡んだりしないようにするための櫛状の道具。
完成した紋意匠図に従って、経糸の上げ下げの情報を穴をあけてあらわした短冊状のボール紙。